Koshi’s diary

本・映画・ドラマについて感想を書きます。たまに雑記。

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ドラマ感想 ディエゴ・ベラスコ監督『ソーシャルディスタンス』

ソーシャルディスタンスをとることが新たな生活様式となりつつある現在。離れていても寄り添おうとする人々の姿を映し出す、ダークで笑えるアンソロジーシリーズ。

www.netflix.com

 

 

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ソーシャルディスタンス。

この言葉が一般的に世に知られる言葉となってから久しい。

2020年はコロナウイルスによって、人々の生活様式が変わった年として歴史に刻まれるだろう。その責任を負うのは現代に生きている我々の世代ということは、一層意識して生活をおくる必要があるはずだ。

 

そんな世の中において、今の時代を映すドラマがネットフリックスで作成され、全世界に向けて放映されている。

 

このドラマ自体も全編リモートで制作され、オンラインでコミュニケーションをしながら、キャストは自宅で自分の演技を撮影して作成されたものとのこと。芸術という分野においても多大なる影響を及ぼしたであろう今回のパンデミックだが、それに負けじと制作された今回の作品なのだと思う。

 

一話が20分前後で作成された短編のドラマで構成されている。

人との直接的な触れ合いがタブーとされた時期における人間のドラマである。

 

私個人の感想としては、想像力が求められている世の中ということを改めて認識させられた。仕事に対する影響や家庭に対する影響、恋人同士の影響、ありあらゆる生活に今回のコロナウイルスは影響を及ぼしているはずである。今自分がかかわっている人たちにどのような影響を及ぼしているのかは想像力を豊かにして、相手の立場にたって物事を考えて、行動できるようになりたいとより一層感じた。

 

BLMについても一部取り上げられている。

コロナというパンデミックの世界において、BLMの活動は議論を呼ぶものであることは理解できる。日本で生活していると縁遠いもので想像しにくいものだろうが、他人事として考えるにはあまりにも重いものだと思う。どのような解決策が打たれるのか、あるいは何も変わらないのかについては注視する必要があるだろう。

 

現代という時代を意識するには、良い作品だった。

ここまでタイムリーに現代を扱った作品を放映してくれた関係者の皆様には畏敬の念を送りたい。

そこまで堅苦しい作品になっていないのもよいポイントだと個人的には思う。

映画感想 バラン・ボー・オダー監督『ピエロがお前を嘲笑う』

世間を震え上がらせたハッキング事件を起こし、さらに殺人容疑で追われる天才ハッカーベンヤミン(トム・シリング)が警察に出頭してくる。ハッカー集団「CLAY」に加担して盗んだ情報によって殺人事件を引き起こしてしまい、今度は自分が狙われていると告白。その自白を基にベンヤミンの身辺調査に着手した捜査員は、不可解な事実を次々に見つけだす。

ピエロがお前を嘲笑う - 作品 - Yahoo!映画

 

ポスター画像

 

ピエロとハッカーという組み合わせが絶妙にマッチするのはなぜだろう。

不気味な姿なのに、ハッキング技術を駆使してシステムを攻略していく姿には圧倒的な強さを感じさせる。

 

物語はベンヤミン拘置所で事件について語りながら、過去の場面をなぞるように進む。

 

重厚な作品というよりは、中学生高校生の時に見たら確実にはまっていただろうなと思うような雰囲気。主人公がさえない男だったのだが、マックスとの出会いを境にそのハッキング技術を活用して、大掛かりなハッキングを披露して世間に注目されるCLAYというグループの一員となる。

 

ここまではなんというか、よくあるストーリーでそこまでの面白みはない。

さえない男が、ちょっといい思いをしてクラブでハイになって意中の女の子に近づこうとしたりといった場面が続く。

言葉にすると難しいのだが、型にはめようとして作った感が否めない全体の雰囲気があったのとヒロインの女の子のよさが全くわからなかったので、周りの人にお勧めしたいとまでは思えなかった。

 

しかし、100%見破れない!騙された!とポスターにあるように、私も最後の最後には騙されてしまった。二転三転するストーリーは、詳細は置いておいて面白みはあるだろう。

ハッカー・ピエロ・100%見破れない!騙された!といったキーワードに心躍る人は、どはまりする作品かもしれない。そのような人たちには一度見ていただいて、きれいにだまされるとエンタメ作品として楽しめるかもしれない。

映画感想 アーロン・ソーキン監督『シカゴ7裁判』

1968年、アメリカ・シカゴ。民主党全国大会の会場近くで、ベトナム戦争に反対する抗議デモが行われる。平和的に行われる予定だったデモは激しさを増し、デモ隊は警察と衝突。アビー・ホフマン(サシャ・バロン・コーエン)やトム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)ら7人の男が、デモで暴動をあおった罪で起訴される。

シカゴ7裁判 - 作品 - Yahoo!映画

 

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Netflix映画にまた名作がうまれた。

巨大な権力に屈せずに闘う男達が描かれる。

 

国に訴えられたのは平和的なデモでベトナム戦争に反対をしようとしていた各グループのリーダー達だ。

彼らは共謀罪という言われもない罪を問われ、裁判を受けることになる。

 

見所はたくさんあるのだが、いくつか取り上げて書いていく。

 

まず1つ目が、訴えられる8人の思想も完全に一致しているものではないこと。彼らはベトナム戦争に対する反戦の意思は一致しているが、そのために何が必要でどんなことをするべきかという思想はそれぞれ異なる。

裁判とは直接関係しないが、彼らの中でも思想の違いがあり、決して完全に一致団結した仲間ではないということが前提として物語は進む。そんな彼等が訴訟を起こされてどのように協力していくのか、そもそも協力しあえるのかは見所だろう。

 

2つ目。作品の雰囲気が重すぎないこと。

これはアーロン・ソーキン監督の手腕がものをいったのだろう。裁判の重い雰囲気のシーン一辺倒ではなく、過去のシーンがカットで入ったりして、くすりと笑えるシーンもある。シリアスなシーンではシリアスに盛り上げて、いい意味で力をぬけるシーンもバランスよく入っている。音楽も作品を邪魔せずに、華をそえている。

 

3つ目、裁判長の描き方が秀逸。

こんなに憎たらしい裁判長おるんかってくらい、嫌いになれる。映画の敵役として私史上一番嫌いな悪役かもしれない。たとえ、悪役であっても憎めないキャラであったりかっこよさがあったりするものだがシカゴ7裁判の裁判長は、一切そういう要素がない。些細な所から嫌いになれるようなキャラ。自分を絶対と思っていて、それ以外のことは一切許さない態度、その上人の名前をひたすら間違い続けるという。まさに裁判長としてあるまじき姿の権化だった。適役に対する憎しみがつのるほど、映画は楽しめるものなのかもしれない。そういう意味で、秀逸な悪役だった。

 

終わり方にも心揺さぶられた。

出演している俳優も豪華だし、ストーリーも演出も素晴らしい。もっと騒がれても良い作品だと思うのだが、テネットと鬼滅の刃に埋もれてしまったのだろうか。

またお気に入りの映画に出会えて私は幸せである。

Netflixありがとう!!

映画感想 新海誠監督『天気の子』

高校1年生の夏、帆高は離島から逃げ出して東京に行くが、暮らしに困ってうさんくさいオカルト雑誌のライターの仕事を見つける。雨が降り続くある日、帆高は弟と二人で生活している陽菜という不思議な能力を持つ少女と出会う。

天気の子 - 作品 - Yahoo!映画

 

ポスター画像

 

東京という舞台で描かれる高校生の物語。

私は新海誠監督が描く東京が好きだ。

過去の作品である、『君の名は』や『秒速5センチメートル』でも感じていたことだが今回の作品でも同様の感想を抱いた。

東京を過度にきれいに描いたり、過度に悪く描いたりをしていない。決して世界にこびていないような東京の描き方が好きなのだ。

街の描写もリアルで、そのリアルさがより一層作品に味を添えている。

(過去作品の感想については以下にて記載。)

以降、ネタバレありで感想を書くので閲覧注意。

 

lifevlog.hatenablog.com

 

lifevlog.hatenablog.com

 

新海誠監督はこの作品の結末について賛否両論があるものだと言及している。

私としては今回の終わり方は素晴らしいと思ったのだが皆さんはいかがだろうか。

 

社会全体に悪影響を与えることをわかっていながら一人の人を救うのか、一人を諦めて社会全体に良い影響を与えるべきなのか。

言葉にすると陳腐。

たとえ社会に悪い影響を与えるとしても一人の人を救うべきだという人が多いのではないだろうか。あくまでも推測だけれど。

しかし、実際そのように行動するのには大きな責任が伴うし社会からのバッシングは大きくなるだろう。そのバッシングを受けながらも孤独に闘うことができる人はいるのだろうか。

 

今回の映画では、主人公の穂高陽菜を救うためであれば天気が狂ったままでもいいと断言している。それをするためであれば、阻止してくる大人たちに対して拳銃を向けてまでも抵抗する。この描写には正直違和感を感じる人も多かったのではないだろうか。私もその一人だ。

 

警察官に抵抗するのはわかるけど、お世話になった人たちに対しても拳銃を向けている。冒頭のシーンで拳銃を人に向けることに対しての嫌悪をしっかりと感じているのに、その拳銃を再び手にして、人に向けている。これが正しいふるまいだとは思えないが、覚悟の示し方としてはとても印象的なシーンだった。

 

覚悟をもって自分が正しいと思う道を進む姿に人間らしさを感じる。

社会のことを全く無視してもいいわけではないが、人に対して過剰な負担を強いる社会は絶対正しいわけではない。そのような社会に対してNoと言えるような強さは必要だろう。

 

そんな穂高の姿に感動できた作品だった。

映画感想 テリー・ギリアム監督『ラスベガスをやっつけろ』

アメリカのジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンが1971年に発表した同名小説を、「未来世紀ブラジル」の鬼才テリー・ギリアムが映像化した異色ロードムービー。71年、ジャーナリストのラウル・デュークと弁護士ドクター・ゴンゾーはバギーレースを取材するため、真っ赤なスポーツカーに大量のドラッグを詰めこんでラスベガスへと向かう。しかし、ドラッグまみれの2人は行く先々で騒動を巻き起こし……。

ラスベガスをやっつけろ : 作品情報 - 映画.com

 

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これは…。

薬物の怖さを伝える啓蒙動画だろうか。

啓蒙動画なのであれば、ある程度の効果はありそうだ。

 

ストーリーは特になく、ラウル・デュークとドクター・ゴンゾーがドラッグでトリップしている映像と現実の映像が入り混じった世界観がひたすら映し出される。

ドラッグをやるとこんな世界になってしまうのかは、ドラッグを利用したことがないのでわからないがこの映画の中では決して魅力的な世界観ではなく、退廃的で混とんとしているし何より狂っている。

ドラッグをやるとこんな風になるのであれば、絶対にしたくないと思う映像をひたすら見せられる。ストーリーはないので、何か謎がとけるであるとかメッセージ性のあるものを感じることはできない。

ドラッグでトリップしている映像を見て、観客が主体的に感じることを求めているのだろうか。

 

役者の面々は豪華。

幼いころのトビー・マグワイアが登場していて、おお!っと思ったのがこの作品を観ていて私が一番心躍った瞬間だった。ジョニー・デップが主演だが、彼も決してかっこよくない。かっこよくない演技ができるのも彼の実力のひとつであろう。

 

映画そのもの自体には私には理解が追い付かず、あまり楽しめなかった。

私は12モンキーズも苦手なたちなのだが、テリー・ギリアム監督は12モンキーズの監督でもあった。妙に納得してしまった。

 

彼の作品の良さを語れる人がいれば、ぜひ教えていただきたい。

映画感想 新海誠監督 『君の名は』

1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。

君の名は。 - 作品 - Yahoo!映画

 

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新海誠監督作品を有名にしたのはこの作品。

当時付き合っていた彼女と別れたてだった私が、何かを求めるように映画館に2回も観に行ったのは懐かしい思い出だ。

 

秒速5センチメートルの結末を知っている身からするとどんな結末を迎えるのかドキドキして見た記憶がある。

秒速5センチメートルについてはこちらから。

映画感想 新海誠監督『秒速5センチメートル』 - lifevlog’s diary

 

秒速5センチメートルと比べると作風も大きく変わったように感じる。秒速5センチメートルでは、しっとりした音楽と景色でたんたんと流れていったのに対し、君の名はでは展開も激しく、RADWIMPSの音楽が作品をきらびやかに彩る。どちらが好きかは好みが分かれる所だろう。

 

絵のきれいさはより磨きがかかっている。

自然を描いているシーンもとてもきれいなのだが、都心を描いているシーンの絵がお気に入りだ。都心だからといって、過度にきれいにも汚くも描いているわけではなく、とてもリアルに近い形で描かれている。そのリアルさが、観客をより作品のなかに引き込んでくれる要素のひとつなのは間違いないだろう。

 

この作品で、RADWIMPSの音楽と新海誠作品のコラボが始まった。君の名はでは、きれいなアニメーションの映像とマッチして映画をより盛り上げてくれた。次回作の天気の子でもRADWIMPSの音楽と一緒に作られている。

これだけヒットするとRADWIMPSの音楽ありきの新海誠作品みたいな感じになって、RADWIMPSの音楽なしで映画を作るハードルが上がりそうだ。

今後、どのようなアニメーションを描いてくれるのか引き続き楽しみにしたい。

映画感想 新海誠監督『秒速5センチメートル』

小学校の卒業と同時に離ればなれになった、遠野貴樹と篠原明里。そのとき、二人の間には二人だけの特別な想いが存在していた。しかし、無情にも時だけが過ぎてゆく……。そんな日々を重ねたある日、ついに貴樹は明里に会いに行くことを決意。訪れた約束の日、チラホラと舞う雪がスピードを増し、辺りを白く包んで行った……。

秒速5センチメートル - 作品 - Yahoo!映画

 

ポスター画像

 

新海誠監督の作品と出会ったのはこの作品が初めて。

大学生の時だった。

当時アニメ映画といえばジブリ細田守監督の作品だったが、この秒速5センチメートルでまた新しいアニメ映画の在り方を感じた。

 

その当時の私にどこが刺さったかというと、絵のきれいさである。

自然の中にいるシーンはもちろんきれいなのだが、私が一番すごいと思ったのが電車のシーンである。

 

第一話の桜花抄で貴樹が明里に会いに行く電車のシーンがあるのだが、その時に映る新宿駅のシーンや電車内でのシーン。

そのシーン自体には何か劇的なドラマがあるわけではなく、ただただ時間が過ぎていくだけだ。しかし、ただ時間が過ぎるだけのそのシーンがあまりにも切なく心に刺さる。

 

電車の描写は実写のようにリアル、アニメの映画であまりそういう描写を見たことがなかったのでまずそこが素晴らしいところだと思う。

そして、栃木の雪道を進む電車の寂しさは地方の寂しさとあいまってノスタルジックな気持ちにさせる。私の出身が茨城県なので、都心から地方に向かう電車は人がだんだん少なくなってきて寂しくなることを知っている。

自分が知っているその情景を中学生の主人公が体験していて、どれだけ心細いだろうかと共感をしてしまう。

 

主人公の貴樹があまりにも独りよがりなのではないかとかいろいろな意見はあるようだ。私は電車のシーンを見るだけでもこの映画の価値があると思う。

 

また、主題歌である山崎まさよしOne more time, One more chanceがとても良い。