読書感想 村上龍 『限りなく透明に近いブルー』
米軍基地の街・福生のハウスには、音楽に彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちている。そんな退廃の日々の向こうには、空虚さを超えた希望がきらめく―。著者の原点であり、発表以来ベストセラーとして読み継がれてきた、永遠の文学の金字塔が新装版に!群像新人賞、芥川賞受賞のデビュー作。
読んだのは2回目。
最初読んだときは衝撃だった。
衝撃というよりはただ面食らったという表現の方が適切かもしれない。
こんな本があるんだ、という感覚。
新しい世界が開けたような感覚だ。
それからしばらく時間をおき、今回もう一度読んだ。
私が今回読んで抱いた感想は、最後の最後で救われた、というものだった。
それまでは基本的に、生々しい暴力、セックス、ドラッグの描写が続く。
読んでいて楽しくないし、感動も悲しみも何もない。
悲惨な現実を、なんの感情もなくただの情報として、生々しく伝えられている感覚だ。
その分、最後の最後の描写が活きてくるのだろう。
かすかな希望ではあるが、暗闇から一筋の光が入ったような終わりかたのように感じられる。
最後に、主人公のリュウのセリフで印象深かったものを一つ引用したい。
『(略)昔はいろいろあったんだけどさ、今からっぽなんだ、何もできないだろ?からっぽなんだから、だから今はもうちょっと物事を見ておきたいんだ。いろいろ見ておきたいんだ』
自分がからっぽになって見る景色は、どんな景色になるのだろうか。
そんなことを考えるセリフだった。