映画感想 デブラ・グラニク監督 『足跡はかき消して』
「ウィンターズ・ボーン」のデブラ・グラニク監督が、ピーター・ロックの小説「My Abandonment」を映画化したヒューマンドラマ。PTSDに苦しむ退役軍人ウィルは、13歳の娘トムとともにオレゴン州ポートランドの森の中で人目を避けるように暮らしていた。ところがある日、散歩していたトムがジョギング中の男性に見つかり通報されてしまう。福祉局の監視下に置かれることになった父娘は、強制的に社会復帰支援を受けることになるが……。ウィル役に「最後の追跡」のベン・フォスター。
原題は『Leave No Trace』
森の中で暮らす父と娘の物語。
父親のウィルと娘のトム。
この二人の演技が淡々としているが真に迫るものがあり、切ない気持ちを呼び起こす。
誰しもが出会いや別れを経験するものだと思うが、この作品の別れはあまりに単調で、理解ができて、どうしようもないものである。
この物語に悪者はいない、あるのは社会との関わり方の違いだけだ。
エッセンスを書き連ねるとこのような表現になるだろうか。
1つ素敵なセリフがあったので書いておく。
トムとウィルが福祉局の監視下で生活を始めたときの会話。
『思想は自由だ。』
何もかも変わったね?というトムからの問いかけに対するウィルのセリフ。
そう、どのような状況に置かれようと自分の中の思想は自由なのである。
しかし、その思想があるゆえに歯がゆさを感じ生きづらさを感じることもあるだろう。
思想と現実のギャップが埋められずに苦しむことはよくあることだ。
と、ごちゃごちゃ書くときりがないのでやめておく。
思想は自由だというのは、何よりの真理である。
そんなセリフが出てくる映画に出合えてよかった。