映画感想 新海誠監督『秒速5センチメートル』
小学校の卒業と同時に離ればなれになった、遠野貴樹と篠原明里。そのとき、二人の間には二人だけの特別な想いが存在していた。しかし、無情にも時だけが過ぎてゆく……。そんな日々を重ねたある日、ついに貴樹は明里に会いに行くことを決意。訪れた約束の日、チラホラと舞う雪がスピードを増し、辺りを白く包んで行った……。
新海誠監督の作品と出会ったのはこの作品が初めて。
大学生の時だった。
当時アニメ映画といえばジブリか細田守監督の作品だったが、この秒速5センチメートルでまた新しいアニメ映画の在り方を感じた。
その当時の私にどこが刺さったかというと、絵のきれいさである。
自然の中にいるシーンはもちろんきれいなのだが、私が一番すごいと思ったのが電車のシーンである。
第一話の桜花抄で貴樹が明里に会いに行く電車のシーンがあるのだが、その時に映る新宿駅のシーンや電車内でのシーン。
そのシーン自体には何か劇的なドラマがあるわけではなく、ただただ時間が過ぎていくだけだ。しかし、ただ時間が過ぎるだけのそのシーンがあまりにも切なく心に刺さる。
電車の描写は実写のようにリアル、アニメの映画であまりそういう描写を見たことがなかったのでまずそこが素晴らしいところだと思う。
そして、栃木の雪道を進む電車の寂しさは地方の寂しさとあいまってノスタルジックな気持ちにさせる。私の出身が茨城県なので、都心から地方に向かう電車は人がだんだん少なくなってきて寂しくなることを知っている。
自分が知っているその情景を中学生の主人公が体験していて、どれだけ心細いだろうかと共感をしてしまう。
主人公の貴樹があまりにも独りよがりなのではないかとかいろいろな意見はあるようだ。私は電車のシーンを見るだけでもこの映画の価値があると思う。
また、主題歌である山崎まさよしのOne more time, One more chanceがとても良い。