映画感想 レタ・ガーウィグ監督『レディ・バード』
レディ・バードと名乗り、周囲にもそう呼ばせているクリスティン(シアーシャ・ローナン)。高校生最後の年に看護師の母マリオン(ローリー・メトカーフ)と進学先を決めるために大学見学に行くが、帰りの車中で地元のカリフォルニア州サクラメントから離れて都市部の大学に進みたいと言ったことから大げんかになる。それ以来、母と衝突を重ねる一方、親友のジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)とも疎遠になってしまう。
主人公と同年代の高校生の時に観ていたら、より一層感じるものが大きかったのではないかと思う。
田舎の決して裕福ではない家で生活する、レディ・バード(シアーシャ・ローナン)。
高校を卒業したら都市部の大学へ進学することを目指しているが、母親には止められる。母親は娘のためを思って、地元の大学への進学を勧めている。
私も大学へ進学する際に上京したくちなので、レディ・バードの気持ちがわかる。
都市部での生活をしたことがないくせに、そこには何か素敵な世界が待っている気がして都市部へ進出すること以外の進路は考えられなくなる。それを頑なに拒否させられたらいやにもなるだろう。
一方で仮に経済的に余裕がない場合に、奨学金を借りて都市部の大学へ進学させることのリスクも今は理解しているので、地元の大学へ進学することを進める母親の気持ちもわかる。
だからこそ、最後のシーンは素敵だと感じる。
不器用な愛情を、どのように理解しあえるのか、どのように理解できるものになるのか。そこに答えはないが、一つの在り方を見せてくれていたように思う。
特別な才能もない、ありふれた青春を映し出しているような映画で、驚きがある展開があるわけではない。それなりに苦労するし、一方で大切なものに気づいて成長していく、そんな物語。
正直パンチ力には欠けるような印象を受けたけど、人間の不器用で素敵な生きざまを、そっと教えてくれるような映画だった。