ドラマネタバレ感想 ギャスパー・ウリエル監督『トワイス・アポン・ア・タイム』
失恋から立ち直れないヴァンサンのもとに届いた不思議な箱。ふと中をくぐってみると、なんとその箱は恋人と別れる前の過去につながっていて。
あらすじだけを見ると、タイムリープもので切ないながらも恋愛とはなんたるかを感じたり、新しい事実を知って成長するような物語なのかと思う人もいるだろう。
そう思って見た人はきっと面食らう。
一言で表現してしまうと、終始謎の雰囲気に包まれているし、登場人物たちのキャラクターが独特でつかめない。
ヴァンサンの元恋人であるルイーズは、不倫経験があったり、不倫相手の嫁が自分の目の前で自殺した経験をしていたり、なんなら浮気をしたりと、過去の経験があるせいか一筋縄ではいかない。
ヴァンサンもバツイチ子持ちの男で、なんでそこまでルイーズに執着するのかもなかなかわからなかった。ルイーズが死んでしまうということが分かって、そういうことだったのかと分かる。
配達員や隣人の人もインパクトが強いし、言葉が象徴的な言葉が多く、現実感がない。
村上春樹さんの作品感に似てる感じがしたのは私だけだろうか。(これは単純に私が村上春樹さんの作品を読んでいる最中に見たからかもしれない。)
ストーリーの肝である箱の正体も謎のままだ。
ドラマの最後では、箱を探している謎の男がヴァンサンの前に銃をもって現れて終わる。ヴァンサンは、そこでようやく今まで隠していた箱の存在を吐いてしまう。
結果だけを見ると、過去に戻ってもルイーズの死は変えられず、銃を突きつけられて箱の存在を離してしまったのでもう一度過去に戻る手段もなくなる、という終わり方だ。
結末はドラマチックではなく、現実的。
ヴァンサンがカウンセラーを受けている描写から、箱の存在もそれにまつわる人物も架空のもので、ヴァンサンが精神を病んでいたって終わり方かなーと思っていたが、そういったことでもなかった。
結末としてはすっきりしないし、謎も解消されないまま終わったのでもやもやは残るが、音楽やカメラワークが独特で世界観に引き込まれる作品になっている。
深夜にお酒でもちびちび飲みながら入り込むにはいい作品かもしれない。