読書感想 遠野遥『破局』
私を阻むものは、私自身にほかならない――ラグビー、筋トレ、恋とセックス。ふたりの女を行き来する、いびつなキャンパスライフ。28歳の鬼才が放つ、新時代の虚無。
第163回芥川賞を受賞作品。
著者は28歳とのこと。ほぼ自分と同年代だ。
この歳で芥川賞を受賞するのは珍しいのではと思い、芥川賞作家の最年少の作家を調べてみた。
すると、2003年芥川賞、当時19歳の綿矢りさが今のところ最年少の作家みたいだ。
めちゃくちゃ若いな!と思ったが、恐らく自分が年を重ねているので若いという印象を持ったのだろう。
何事も、自分基準で考えてはいけない。
反省。
普段本を読むときには作家の年齢は気にしないが、自分と同年代とのことで、多少意識する。
同じ時代を生きてきた作家がどのような世界を描いているのか、そういう目線で読んだ。
話は主人公の陽介目線で進む。
個人の所感だが、陽介は性欲(幼稚さ?)と規律(ストイックさ?)の両方を持った男として描かれている。
二人の女性である、灯と麻衣子も物語に深く関係してくる。
灯と麻衣子。それぞれ、欲望と規律を表現するような人物として描かれていたようにも感じる。
その間で揺れ動く、陽介。
結末やいかに、といった感じだろうか。
性欲と規律が主な題材のように感じた。
両方を持つ陽介は変なやつのように思えるが、実際人間は両方の側面を持つだろう。
以下の文章は、その一端を示すものとも読み取れる。
滞りなく射精し、準備しておいたティッシュで精液を拭き取った。性器からは、射精した後もしばらくは少量の精液が出ている。止まるまで待っていられたらいいが、勉強をしないといけないから、いつも性器が完全に乾く前に下着を穿く。すると下着が汚れる。だからシャワーを浴びる前に自慰をしたほうがいい。しかしそうするとシャワーから出る頃にはまた自慰をしたくなっていて、実際にしてしまう。だから最近はもっぱらこの順序だった。
文章は端的で、わかりやすい。
描かれている世界は現実的でないようでいて、その実、現実をとらえている。
欲望と規律に関して、私自身としては、どちらも悪いものではないと思う。
どちらか一方に触れすぎないように、自分の欲望と規律が他の人に必ずしも当てはまらないことを意識して、自分なりの軸を作っていくのがよいのだろう。
バランス感覚を適正につけていくことが必要。
個人的に好きだったのは、随所随所で現れる友人の膝が話すシーン。
膝は、この小説の題材(性欲、規律)から外れた視点で物事を話してくれる。
なんかほっとする。
今作は性という人間の根本?ともいえる部分を描いた作品だったが、今後遠野遥さんが、どのような作品を書かれていくのか楽しみだ。
今回わかったのは、性がテーマの作品だと、ブログ書きずらいということ。
きっと私の文章力がまだまだたりないんだろう。