映画感想 吉田大八監督『紙の月』
バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花（宮沢りえ）は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい……。
起承転結がしっかりした映画。
特に転が良かったと個人的には思う。
きれいなまま終わらずに、かつ、含みを持たせたようなエンディングだった。
主人公の梅沢含めて癖のある人物が多く完璧ではない人が多い。
梅沢は不倫・横領をしていて、世間的にはいわゆる悪人である。しかし、そこに至るまでの過程であったり、梅沢が考える倫理観を考えると一概に悪人とも言い切れない。
宮沢りえ演じる梅澤のことを、『最も美しい横領犯』と表現しているポスターの文言は言い得て妙でしっくりくる。
もちろん、見た目だけの話ではない。
善悪って価値観であったり立場であったりで変わるもので絶対のものではないと思っているのだが、それがきれいに表現されていたように思う。
基本的に救いのない物語なんだけど、最後のシーンはよかったな。
宮沢りえが世代ではなくて、作品を観たのは初めてだったがとてもきれいだった。
