映画感想 アーロン・ソーキン監督『シカゴ7裁判』
1968年、アメリカ・シカゴ。民主党全国大会の会場近くで、ベトナム戦争に反対する抗議デモが行われる。平和的に行われる予定だったデモは激しさを増し、デモ隊は警察と衝突。アビー・ホフマン(サシャ・バロン・コーエン)やトム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)ら7人の男が、デモで暴動をあおった罪で起訴される。
Netflix映画にまた名作がうまれた。
巨大な権力に屈せずに闘う男達が描かれる。
国に訴えられたのは平和的なデモでベトナム戦争に反対をしようとしていた各グループのリーダー達だ。
彼らは共謀罪という言われもない罪を問われ、裁判を受けることになる。
見所はたくさんあるのだが、いくつか取り上げて書いていく。
まず1つ目が、訴えられる8人の思想も完全に一致しているものではないこと。彼らはベトナム戦争に対する反戦の意思は一致しているが、そのために何が必要でどんなことをするべきかという思想はそれぞれ異なる。
裁判とは直接関係しないが、彼らの中でも思想の違いがあり、決して完全に一致団結した仲間ではないということが前提として物語は進む。そんな彼等が訴訟を起こされてどのように協力していくのか、そもそも協力しあえるのかは見所だろう。
2つ目。作品の雰囲気が重すぎないこと。
これはアーロン・ソーキン監督の手腕がものをいったのだろう。裁判の重い雰囲気のシーン一辺倒ではなく、過去のシーンがカットで入ったりして、くすりと笑えるシーンもある。シリアスなシーンではシリアスに盛り上げて、いい意味で力をぬけるシーンもバランスよく入っている。音楽も作品を邪魔せずに、華をそえている。
3つ目、裁判長の描き方が秀逸。
こんなに憎たらしい裁判長おるんかってくらい、嫌いになれる。映画の敵役として私史上一番嫌いな悪役かもしれない。たとえ、悪役であっても憎めないキャラであったりかっこよさがあったりするものだがシカゴ7裁判の裁判長は、一切そういう要素がない。些細な所から嫌いになれるようなキャラ。自分を絶対と思っていて、それ以外のことは一切許さない態度、その上人の名前をひたすら間違い続けるという。まさに裁判長としてあるまじき姿の権化だった。適役に対する憎しみがつのるほど、映画は楽しめるものなのかもしれない。そういう意味で、秀逸な悪役だった。
終わり方にも心揺さぶられた。
出演している俳優も豪華だし、ストーリーも演出も素晴らしい。もっと騒がれても良い作品だと思うのだが、テネットと鬼滅の刃に埋もれてしまったのだろうか。
またお気に入りの映画に出会えて私は幸せである。
Netflixありがとう!!