読書感想 三島由紀夫『不道徳教育講座』
大いにウソをつくべし、弱い者をいじめるべし、痴漢を歓迎すべし等々、世の良識家たちの度肝を抜く不道徳のススメ。西鶴の『本朝二十不孝』に倣い、逆説的レトリックで展開するエッセイ集、現代倫理のパロディ。
三島由紀夫の作品で始めて読んだ作品がこの作品だ。
世間一般でなんとなく是とされていることが本当に是なのかを問う作品。
常識は疑わなければいけないものだという当たり前の事実を白日の下にさらす作品だ。
三島由紀夫の作品ってもっと固くて、表現が難しくて難解な作品なのだろうと想像していたのだが、この作品においては一遍がとても短いし表現は固くなくわかりやすいし、皮肉が聞いている良い作品だ。
目次を見てみると、なんだこいつって思うほど嫌な目次が並ぶ。
例としていくつかあげてみる。
『友人を裏切るべし』
『痴漢は歓迎すべし』
『人の不幸を喜ぶべし』
『ケチをモットーにすべし』
『恋人を交換すべし』
どれか一つでも実践したいと思うものがあっただろうか。
私にはこの目次の中で実践したいと思うものはひとつもなかった。
友人を裏切りたいと思ったこともないし、痴漢は歓迎したくないし、人の不幸は喜べないし、ケチをモットーにしたいくないし、恋人を交換したいと思わない。
だがそれは時と場合によるものだということに気づかされる。
三島由紀夫が描く世界の中では、それが絶対の正解ではないことをあらわしている。
これが1967年に書かれた作品か…。世間は変わったかもしれないが、人間の本質はそこまで変わっていないのかもしれない。
今から50年以上前に書かれた作品。
全てが現代に当てはまるわけではないけど、現代にも当てはまる部分がある。
シンプルに面白い。読んで損はない作品だと思う。