読書感想 三島由紀夫『若きサムライのために』
男の生活と肉体は、危機に向って絶えず振りしぼられた弓のように緊張していなければならない―。平和ボケと現状肯定に寝そべる世相を蔑し、ニセ文化人の「お茶漬ナショナリズム」を罵り、死を賭す覚悟なき学生運動に揺れる学園を「動物園」と皮肉る、挑発と警世の書。死の一年前に刊行された、次代への遺言。
若きサムライのために / 三島 由紀夫【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア
三島が考える、精神論・文化論・政治論が快活な文章でつづられている。
すごいエネルギッシュな内容。この作品が発刊された1年後に切腹をしているということが信じられない。
私は27歳の一人暮らしをしている会社員だが、惰性で生きていてはならないということに気づかされる。
三島の文章を読むと、自身について振り返ることがある。ドキッとする文章が書かれていて、自身の生活を省みて、『ああ気をつけなければならないな』と思う。
精神的にも、政治や文化という大きな事柄に対しても無関心にならずに自分なりの考えをもって生きていかなければならない。しかし、それらはあまりにも大きなテーマで人類の永遠のテーマレベルで難しいこと。三島の作品にそれらすべてが含まれているわけではないが、はっとさせられるような文章が書いてあり一つの参考になるだろう。
私が面白いと思った文章を以下に記載する。
・コロナという世界的な危機を生きている今しみた文章:『勇者とは』
現代の若い”サムライ”が勇者か不勇者かを見る区別は、もっと別のところに見なければなるまいと思う。それは何であろうか。それは非常事態と平常の事態とを、いつもまっすぐに貫いている一つの行動倫理である。危機というものを、心の中に持ち、その危機のために、毎日毎日の日常生活を律していくという男性の根本的な生活に返ることである。
・他国と比較して論じることは分かりやすいが、本質ではないと思う今日この頃:お茶漬けナショナリズム
口に日本文化や日本的伝統を軽蔑しながら、お茶漬けの味とは縁の切れない、そういう中途半端な日本人はもう沢山だということであり、日本の未来の若者にのぼむことはハンバーガーをぱくつきながら、日本のユニークな精神的価値を、おのれの誇りとしてくれることである。
日常に埋もれてなかなかこういったことを考えることが少なくなってきている気がする。
たまには読書をして、自分の頭をリフレッシュしよう。
当たり前に慣れないように。