映画感想 ノア・バームバック監督『マリッジ・ストーリー』
女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と監督兼脚本家のチャーリー(アダム・ドライヴァー)は、かわいい息子がいる仲のいい家庭を築いていたが、夫婦の関係は少しずつ悪化していき、離婚を決める。円満な協議離婚を望んでいたが、ため込んできた相手への怒りを爆発させ、負けず嫌いの二人は離婚弁護士を雇って争う。
映画とか小説とか、必ずしもハッピーエンドで終わる必要はないと私は思っている。
どちらかというと単なるハッピーエンドというよりかは、生々しい日常を描きつつその中でもがきながら生きていくようなストーリーのほうが好みだったりする。
上記の感覚に賛同いただける方にはぜひおすすめしたい作品の一つ。
結婚するまでを描いた作品ってよくあると思うのだが、この作品は逆に離婚するまでを描いている。
まさに逆転の発想。
常識にとらわれることなく、そこに真摯に向き合った作品だと思う。
チャーリー(アダム・ドライヴァー)とニコール(スカーレット・ヨハンソン)は二人とも決して何か決定的な欠点があるわけではないし、子供にはとても優しく、劇団の仲間ともうまく付き合っているような素敵な大人だ。
しかし、ニコールはチャーリーと結婚したことによって自分というものがなくなって『母親』『妻』としてのみ生きているように感じてしまう。チャーリーはニコールがそんな風に思っていることにはまったく気づかずに、それが当たり前のように生きている。
そんなすれ違いから、ニコールから離婚を切り出すことに…。
結婚をしていない自分からしたらその気持ちはまだ分からないけど、母親や奥さんであるまえに一人の人間なんだよなぁとか、当たり前のことをおろそかにしてはいけないんだなぁとかいうことを考えさせられた。
あとは離婚を調停する時に弁護士を立てると弁護士同士の争いも絡んできて、より話がひどくなる様などは見ていて辛い。
オープニングの描写とエンディングの描写には救われたかな。
決してハッピーエンドではないけど、これも一つの生き方なのだと思う。
幸せいっぱいの恋愛をしているようなときに観たい作品だ。