Koshi’s diary

本・映画・ドラマについて感想を書きます。たまに雑記。

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映画ネタバレ感想 ウルリケ・コフラー監督『人生はあるがままに』

不妊治療が難航する中、休暇でサルディニア島を訪れた夫婦。隣室の家族連れと知り合いになり、ともに時間を過ごすうち、夫婦の心は少しずつすれ違っていき…。

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オーストリアの映画。

不妊治療に臨んだが、それがうまくいかず子宝に恵まれない夫婦を描いた作品。

4回の治療を重ねてもうまくいかず、補助金も使えなくなったタイミングで二人は休暇もかねて旅行に行く。

 

そこで隣の部屋に来たのは4人家族の一家。

庭がついた部屋になっていて、柵などの仕切りがなく隣の一家の会話が聞こえてくる。

そうすると否が応でも隣の家族の子供のことが気になってしまい、うまく気持ちが切り替えられない。

 

なぜ自分たちには子供ができて、隣の家族には子供がいるんだろう…。

そんなことを考えてしまう。

二人は都心に住む夫婦で、隣の一家は田舎からきている家族で、二人はなまりをばかにしたように少し見下したような会話をしている。

そんな風にして相手を見下すことで、心の平静を保っているようにも見える。

 

そんな状況の中で過ごしていくうちに、二人の間にもすれ違いが生まれてしまう。

距離を置こうとする夫と、距離を縮めたい妻。

不妊治療に臨むうちにセックスレスになり、愛し合うことができない状況。

最終的にこの問題が解決しないままこの映画は終わる。

 

何気ない会話が、人を傷つけることがある。

人の状況は千差万別で、何が幸せで何が幸せでないかなんてその人によって違うので、踏み込んでいい領域と踏み込んではいけない領域がある。

その一言で、相手の心を殺してしまうことだってあるのだ。

 

結構好きな作品でした。

映画ネタバレ感想 デビッド・ロウリー監督『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』

若夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)は田舎町の小さな家で幸せに暮らしていたが、ある日Cが交通事故で急死してしまう。病院で夫の遺体を確認したMは遺体にシーツをかぶせてその場を後にするが、死んだはずのCはシーツをかぶった状態で起き上がり、Mと暮らしていたわが家へ向かう。幽霊になったCは、自分の存在に気付かず悲しみに暮れるMを見守り続ける。

解説・あらすじ - A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー - 作品 - Yahoo!映画

 

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癖がすごい。

今更ながら千鳥にはまっている著者です。

冒頭から関係ないことを言ってすべりちらかしています。

 

さて、今回鑑賞したのは『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』。

あらすじを見ただけでなんとなく興味をそそられる。

生きていた時は気づけなかったことに死後やわかる。それは一体何が分かるというのだろう。

わくわくして鑑賞する。作品の雰囲気は好きだった。

 

カメラの取り方も、カット割りを巧みに使って場面を転換させるというよりは定位置で流すようなシーンが多かったのも印象的。

そうすることによって、ゴーストとなった男の視点というのが鑑賞者にもなんとなく乗り移ってくる感覚だ。

男の死後、彼女のルーニー・マーラがひたすらパイを食べ続けて吐くまでの描写はノーカットだろうか。本当にひたすらパイを食べ続ける映像が定点の映像で流れ続け、なんだかいたたまれない。

 

それからゴーストは、彼女以外の人々の人生も時間を飛び越えて見守ることになる。

自分たちが住んでいた家が建つ前の野原の状態の時に家を建てようとした家族、家が壊される瞬間、パーティーで死生観について語る人々、超高層ビルになった時代。

 

死生観の語りの描写は好きだった。

ああいう話を飲み会でできると楽しい。

 

ゴーストは、彼女が家に残していたメモを読んで消える。

そのメモの中身に何が書いてあったかはわからない。

こうやって感想を書いていると、あらゆる死生観やひいては自分と彼女の生活を見て、混乱しているゴーストがそのメモを通じて、ようやく自分の死を受け入れられたということなのだろうかと思う。

 

癖がすごいし、人を選ぶ映画だとは思うが、興味がある方はぜひ見ていただきたい。

人によってまた違う解釈が生まれるかもしれない。

読書感想 村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〔上〕』 | 新潮社

 

                        

 

ファンタジーのような世界と無機質な主人公が化学反応を起こしている。

無機質なという表現が正しいのかは少し迷うが、世界の終わりの僕もハードボイルド・ワンダーランドの私も、どちらも危うい状態に追い詰められてもどこかでそれを達観していて、その時その時を過ごしている。

 

世界観は現実離れしている設定のはずなのに、そういった主人公目線の描写があるからかなぜか現実感がある。

 

・お気に入りの表現

『あるときには剛胆になれるし、あるときには臆病です。ひとくちじゃ言えません』『思考システムというのはまさにそういうものなのです。ひとくちでは言えん。その状況や対象によってあんたは剛胆さと臆病さというふたつの極のあいだのどれかのポイントを自然にほとんど瞬間的に選びとっておるのです。そういう細密なプログラムがあんたの中にできておるのですな。しかし、そのプログラムの細かい内訳や内容についてはあんたは殆んど何も知らん。知る必要がないからです。≪略≫』

 

自分の性格をどんな風に表現したらいいかって言われると、とても困ってしまうことがある。一言じゃ言えないし、実際自分でもよくわかっていないのだ。

そんな気持ちをなんとなく、きれいにまとめてくれている表現だと思う。

その状況や対象によって剛胆な時もあるし、臆病な時もある。うん、自分もそうだなと思う。ずっと剛胆であったり、ずっと慎重であれたほうが一貫性があって、人としての魅力もあるのかもしれないが、私はそうはいられない。

 

世界観も好きだし、随所に光る表現がある。

とてもお気に入りの作品だ。

ドラマネタバレ感想 ギャスパー・ウリエル監督『トワイス・アポン・ア・タイム』

失恋から立ち直れないヴァンサンのもとに届いた不思議な箱。ふと中をくぐってみると、なんとその箱は恋人と別れる前の過去につながっていて。

Twice Upon A Time | Netflix Official Site

                                     

                                   2019年12月配信作品 Netflix 最新ラインナップ | ネタバレなしネトフリ案内所

 

あらすじだけを見ると、タイムリープもので切ないながらも恋愛とはなんたるかを感じたり、新しい事実を知って成長するような物語なのかと思う人もいるだろう。

 

そう思って見た人はきっと面食らう。

一言で表現してしまうと、終始謎の雰囲気に包まれているし、登場人物たちのキャラクターが独特でつかめない。

 

ヴァンサンの元恋人であるルイーズは、不倫経験があったり、不倫相手の嫁が自分の目の前で自殺した経験をしていたり、なんなら浮気をしたりと、過去の経験があるせいか一筋縄ではいかない。

 

ヴァンサンもバツイチ子持ちの男で、なんでそこまでルイーズに執着するのかもなかなかわからなかった。ルイーズが死んでしまうということが分かって、そういうことだったのかと分かる。

 

配達員や隣人の人もインパクトが強いし、言葉が象徴的な言葉が多く、現実感がない。

村上春樹さんの作品感に似てる感じがしたのは私だけだろうか。(これは単純に私が村上春樹さんの作品を読んでいる最中に見たからかもしれない。)

 

ストーリーの肝である箱の正体も謎のままだ。

ドラマの最後では、箱を探している謎の男がヴァンサンの前に銃をもって現れて終わる。ヴァンサンは、そこでようやく今まで隠していた箱の存在を吐いてしまう。

 

結果だけを見ると、過去に戻ってもルイーズの死は変えられず、銃を突きつけられて箱の存在を離してしまったのでもう一度過去に戻る手段もなくなる、という終わり方だ。

結末はドラマチックではなく、現実的。

 

ヴァンサンがカウンセラーを受けている描写から、箱の存在もそれにまつわる人物も架空のもので、ヴァンサンが精神を病んでいたって終わり方かなーと思っていたが、そういったことでもなかった。

 

結末としてはすっきりしないし、謎も解消されないまま終わったのでもやもやは残るが、音楽やカメラワークが独特で世界観に引き込まれる作品になっている。

 

深夜にお酒でもちびちび飲みながら入り込むにはいい作品かもしれない。

映画ネタバレ感想 高橋渉監督『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』

マッサージに行った父ひろしが、なぜかロボットになって帰ってくる。リモコンで家事をこなす“ロボとーちゃん”にしんのすけは大喜び。しかし、それは日本の父親たちの復権をたくらむ「父ゆれ同盟」の陰謀だった。そして父親革命が発生し、父親たちが暴動を開始。それに対し、ロボとーちゃんはしんのすけと共に立ち上がり……。

映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん - 作品 - Yahoo!映画

 

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クレヨンしんちゃんの映画を一通り見直そうかなと思っている昨今。

特に最近の映画を観ていなかったから最近のやつで見られる作品を観ようかなと。

 

さてこちらは2014年に公開された映画。

6年前。最近ではなかった。

最近のイメージがあったけど、時がたつのは早い。

 

何の気なしに選んだ作品だったけど楽しめた。

思ったよりテーマも幅広い印象。

ロボットが人格を持った時の葛藤であったり、家族の在り方であったり。

 

家族の在り方って正解はないと思うけど、おもいやりがない家族で義務感だけでいるとうまくまわらなくなるはずだ。

そんな示唆があったり、ロボットになることでうまくいくことやうまくいかないことが描かれる。

 

男女のジェンダーやテクノロジー、それらに関して一長一短が描かれていた。

堅苦しく書くとこうなるのだが、それを笑えるぎりぎりの感じで描いていたかな。

 

しんちゃんはいい子や。

 

映画ネタバレ感想 原恵一監督『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

春日部に誕生した“20世紀博”。そこはひろしやみさえたちが育った70年代のテレビ番組や映画、そして暮らしなどを再現した懐かしい世界にひたれるテーマ・パークだった。大人たちは子供そっちのけで“20世紀博”に熱中していくのだったが……。

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 - 作品 - Yahoo!映画

 

映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲

 

この映画を観るのは何回目だろう。

東京タワーを一家団結して登っていく様は笑いあり、涙ありだ。

 

27歳になって改めて観ると、それはそれで思うところがある。

公開当時は子供だった自分。

育ててもらった両親への思いもこみ上げるし、これから親として立ち振る舞う自分のことも想像してしまう。

 

この映画の中に名シーンと言われるところはたくさんあるだろうが、私のお気に入りはひろしの幼少期から父親になるまでの回想シーンだ。

 

父親の自転車に乗って虫取りに出かけるシーンから、大人になって働き始め、仕事で起こられて、愛する人を見つけて、子供を授かって。

何気ない日常の幸せや苦労が凝縮したシーンだ。

そのシーンは誰もが経験するようなありふれたもので、かけがえのないものなのではないかと思う。

 

そんな今まで築き上げた人生の回想シーンと、童心に帰って子供を放置して楽しんでいる状況。

ひろしは涙を流しながら洗脳から解放され、現実にもどってくる。

 

責任を投げ出して無邪気に楽しみ、夢をもって生きることは楽しいことに違いないが、それだけで成り立つ人生ではないのだ。

責任をもって成し遂げることに意味があるのだろう。

 

それっぽい感想や論考を並べ立てるつもりはない。

この映画を観て、二回も涙を流せたのだから大満足である。

 

クレヨンしんちゃんありがとう。

 

映画ネタバレ感想 福田雄一監督 『ヲタクに恋は難しい』

26歳の会社員・桃瀬成海(高畑充希)は、転職先で幼なじみの二藤宏嵩(山崎賢人)と再会する。イケメンで仕事もバリバリこなす宏嵩はかなりのゲームヲタクで、成海もボーイズラブを愛する隠れ腐女子だった。成海は周りの人にヲタクと知られる“ヲタバレ”を恐れており、家族や友人にも内緒にしていた。

https://movies.yahoo.co.jp/movie/369157/

 

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金曜ロードショーにて鑑賞。

コメディタッチのミュージカル。

随所に福田雄一監督らしい笑いの要素が散りばめられており、クスクス笑える。

 

一方でミュージカル要素である歌と踊りのシーンは少し長く感じてしまうほど、冗長のように感じた。

むしろミュージカル要素なくして普通のコメディ映画にすれば良かったのではと思うほど。

 

コメディタッチでクスクス笑っていたのに急にミュージカルが始まって置いていかれてしまう感じ。

しかも1曲1曲が結構長い。

 

ミュージカル映画がジャンルとして好き嫌いが別れやすいものだとは思うので好みの問題かもしれないが、ストーリーに入り込めない唐突感があり、作品に入り込めずに冷めてしまった自分がいる。

 

1,800円払って見たいと思える作品ではなかった。

若い世代を狙った作品だとは思うので、きっと27歳の男が見るような作品ではなかったのだろう。