ネタバレ映画感想 ジュゼッペ・トルナトーレ監督 『ニュー・シネマ・パラダイス』
映画好きの人にとっては今更何を言っているんだこの若造がと言われそうな言わずと知れた名作。
今更ながら視聴。
個人的な感想になってしまうが、前半の一時間はやや冗長に感じた。
そこからの後半戦に涙腺崩壊した。
そこの緩急が良かったのかもしれない。
全てのシーンではらはらドキドキ感動を与えようと気張ってしまうと、面白い映画であっても、鑑賞している人たちは少し疲れてしまう。
そんな緩急が見事につけられたのがこの映画だと思う。
トトが少年から青年になって、ついには白髪の生えた男性になるまでが描かれている。
私が個人的に印象に残ったのは、トトが地元を離れるときに見送りに来ていたアルフレードが頑なにトトのことを見送ろうとせずにそっぽを向いているシーンだ。
不器用なやさしさ、真のやさしさとは何かを考えさせてくれるようなシーンだった。
このシーンの感動を言語化するのはとても難しいのだが、感動を与えてくれたシーンであったことは間違いがない。
名作と言われている所以が少しは理解ができたような気がする。
ネタバレ映画感想 細田守監督『未来のミライ』
今更ながら鑑賞。
細田守監督作品は好きで一通り見ていて、その中のいくつかの作品では繰り返し見ているような作品もある。
そんな中でもずっと観ていなかったのがこちらの未来のミライだったが、Netflixで観れるようになっていたので鑑賞した。
ずっと鑑賞していなかったのが、評価があまりよくなく、気乗りしなかったというのが理由だ。そのため、期待値はとても低い状態で観たのだが、普通に面白かった。
確かに設定がよくわからないので、そういった意味では物語の世界観には入りずらいような作品ではあったと思う。過去や未来に行き来できる世界観というのは分かるのだが、飼い犬が人の姿で現れたり現実世界ではない別の世界に行くシーンがあり、なんでもありな感じがした。飼い犬の擬人化や、異世界のような東京駅?のシーンはストーリーのために無理くり入れ込めた感じが否めない。鑑賞者の中には、そこで置いていかれる人も多かったのではないかと思う。
時をかける少女でタイムリープものをしていたので、それだけにしたくなかったとかあるのだろうか。時をかける少女は短い期間でのタイムリープで、恋愛や友人関係が主題だったので、それとは異なる描き方ができていたようには思う。未来のミライでは、ひいじいちゃんが生きているときや母親が子供の頃など、自分が生きていない場面に訪れることができているし、家族が主題であった。
ひいじいちゃんが、ひいばあちゃんに対して、かけっこで勝ったら付き合ってほしいとした場面で、そこでひいじいちゃんが勝っていなかったらひ孫である自分たちはいないというシーンがあるのだが、そういった運命感を伝えるようなシーンは印象的だった。
くんちゃんが未来ちゃんの、兄としての自覚が芽生える異世界でのシーンなど無理くり感は否めないが、それを踏まえても面白い作品だった。
家族で観たりしたら、より面白いのではないだろうか。
映画ネタバレ感想 タイラー・ニルソン│マイケル・シュワルツ監督 『THE PEANUT BUTTER FALCON』
現実的ではないけど、こういうめぐり合わせがあって、こんな旅ができたら最高だよなと思わせてくれる映画。
本筋からは離れるけどタイラー役のシャイア・ラブーフの体がアラサー男から見ると、理想のかっこいい体であると感じた。(完全に個人の感想)
無駄のないきれいな筋肉の体ではないのだが、うっすらした脂肪とその奥に筋肉がある感じ。あの体で海沿いで酒を飲む姿はかっこいい。きれいな肉体でトレーニングにはげみ、ささみ肉を食べる姿には色気を感じないのは私だけだろうか。なぜ色気を感じないのかは分からない。禁欲的な姿が象徴されて、色気とは遠ざかるのだろうか。
色気といえば、エレノア役のダコタ・ジョンソンも何とも言えない透明感を醸し出している。顔なのか雰囲気なのかなんとも言えないが、色気が出ている。映画のロケーションが自然あふれる夏の季節を映しているからなのかもしれない。
そしてこの映画のヒーローであるザック役のザック・ゴッツァーゲン。彼とタイラーの会話の中には人々を勇気づけるようなシンプルで力強いメッセージがある。
ストーリー的には、真新しい何かがあるわけではなかったし現実的かと言われるとそうではない描写もあったが、確実に観た人の気持ちを明るくさせてくれる映画。そして旅に出たくなるような映画だった。
あぁ…、旅に出たい。。今まさに夏休みだし。
あぁにっくき、コロナ。はやくおさまってくれ。
映画ネタバレ感想 アンソニー・ラマス監督『ホテル・ムンバイ』
実話に基づいて作成された作品。
インドの五つ星ホテルに武装集団が突然現れて無差別に人を殺していく。
そんな状況の中で、ホテルの従業員や宿泊客が逃げ惑う様子が描かれている。
映画の随所に格差社会の描写が描かれている。
ホテルのマネージャーと従業員の関係性があまりにも上下関係として隔たっているようであったり、子供を持つ親であってもホテルの従業員として働く男性とホテルに宿泊客として訪れている男性では、その扱われ方に雲泥の差がある。
武装集団がなぜテロ行為に及んだのかの背景は詳細には描かれていないが、そういった格差社会で搾取されているということを背景に行われているようだ。
なんの躊躇もなく次々に人が殺されていくシーンは無残である。
ホテルのマネージャーや従業員、宿泊客という関係性も武装集団が表れて次々と人が殺されている状況下では崩壊してもおかしくはないと思うのだが、このホテルの従業員はあくまでも宿泊客のことを考えて行動している。
プロフェッショナルといえば、それまでなのかもしれないが、極限の状況下でプロとして行動できるのは称賛に値するだろう。
展開やリアルな映像描写含め、久しぶりに良い映画を観たという感想を抱いた。
ホテルはこの事件後、営業を再開したようだ。そして、このテロ行為の首謀者はまだ捕まっていないらしい。
映画ネタバレ感想 アニーシュ・チャガンティ監督『search/サーチ』
忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット。行方不明事件として捜査が始まる。家出なのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。娘の無事を信じる父デビッドは、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。インスタグラム、フェイスブック、ツイッター・・・。そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があったーー。
今更ながら鑑賞。
サスペンス映画だが、インターネットでつながる現代ならではの要素が中心で展開されるストーリーは新しい。
この形のサスペンスの草分け的な作品の一つになると思うのだが、他にこういった作品はあっただろうか。パッと思いつかない。
ストーリー展開自体がものすごい凝っていたり、謎ときが奥深いものではないが、PC画面を見ているような形で描き切っている点と、インターネットを起点にわかる人間関係の希薄さのようなものが見ていて共感を呼ぶ。
自分は家族のことをどれだけ本当に知ることができているのだろうか。
自分が知らない一面がSNSでは展開されていると知った時、自分はどのような気持ちになるのだろうか。そんなことを考えさせられた。
家族であっても100%その人を知ることはできないだろうっていうのは分かっているつもりだけど、その人を大切に思う気持ちが強いほど複雑な心境になるのだろう。
娘が行方不明になって、必死に娘のことを調査する父親。
そんな中で、自分が知らなかった娘の学校の様子や人間関係が明らかになっていく。
自分が娘の気持ちを理解して、接していてあげられていなかったことも同時に理解する。
人と接する時には自分なりの正解をもって接するしかないと思うのだが、相手はどう思っているのかはなかなかわからない。本当はこうして欲しいって相手に言える人はきっと少ないだろうから、より問題は複雑だ。
ましてや家族をもつとなった場合は、生涯をともにすることになるのだから、そのあたりのコミュニケーションや関係性を築き上げるのはとても大切なことになるのだろう。
映画の感想からそれたけど、そんな風に色々考えさせられる良い映画でした。
映画ネタバレ感想 ロブ・バーネット監督『思いやりのススメ』
行きたい場所を巡る当てもない旅で2人が得たものは、生きていく希望とかけがえのない友情。体が不自由な青年と、心に傷を負う介護士が織りなす涙と笑いの物語。
原題は『The Fundamentals of Caring』
原題の方がしっくりくる。なんとなく。
英語と日本語の言語的な構造的な問題なのかなんなのか。
この映画は全てにおいて心地いい映画だった。
93分という比較的短い時間でストーリーは完結し、複雑な展開もないし、ストーリーの流れも割とシンプルだし、描写もわかりやすい、そしてところどころ笑いどころもある。
日々の生活に疲れてしまったときには、ぜひおすすめしたい作品だ。
特に印象に残っているのは、冒頭に介護士向けの研修で出てくる『ALOHA』という言葉。
介護士として働く際に、必要なこととして挙げられていたのが以下の内容だった。
A:Ask
L:Listening
O:Observe
H:Help
A:Ask again
それ以上でもそれ以下でもない。
介護士向けの研修で話をされていた内容ではあるが、身近な周りの人たちとかかわっていく中でもとても大切な言葉だなと実感。
そして、それ以上でもそれ以下でもないという言葉も心にしみる。この言葉がないと、負担がかかりすぎて、結局うまくいかないこともあるんだろうなと想像する。
尋ねて、聞いて、観察して、手助けして、また尋ねる。
その繰り返しを丁寧に日々をおくること、そんなことをまた意識して生活をしていければと思わせてくれた素敵な映画でした。
映画ネタバレ感想 メイコン・ブレア監督『この世に私の居場所なんてない』
人の冷たさに心が折れそう。その上、空き巣に入られてもう限界…。変わり者の隣人と始めた犯人捜しは、非日常の扉を開ける。
I Don't Feel at Home in This World Anymore | Netflix Official Site
ジャンルとしてはブラックコメディ。
冒頭から、主人公のルースは、職場でもプライベートでも報われない日々を過ごしている様子が映される。
その報われない具合が、大げさなものでない分リアルだ。
例えば、バーで一人で本を読んでいたら、その本を知っていると声をかけてくる男。いい感じの関係になるのかと思えば、その男は本のネタバレだけを話して席に戻っていく。
そんなことがどんどん積み重なって、ついには空き巣に入られてしまう。
警察はルースの不用心さを責めるばかり。
警察の捜査体制も信頼できるものではなく、歯がゆい思いをしていたルースは隣人のトニーと協力をして犯人探しに繰り出す。
そこで目の当たりにする現実は、ドラマチックなものではなく、シンプルにいやなやつらがいる。
主人公のルースは等身大の女性で、劇的な展開はないのが逆に映画としては新鮮。
あっけなく、事故的に人は死んでしまう。
人が銃で撃たれるシーンを見てルースは盛大に嘔吐する。
映画だと何かしらドラマを映し出すけど、そんなドラマ的な物事ばかりじゃないよね。
そう思わせてくれる作品だった。
まあ、この映画のようなことも日常あるかと言われるとないんだけどね。
というかもはや現実になってほしくはない。