映画感想 ヴィンチェンゾ・ナタリ監督 キューブ
奇抜なストーリー、斬新なビジュアル・センスで話題となったカナダ産異色サスペンス。謎の立方体(=CUBE)に閉じこめられた男女6人の脱出劇を、緊迫感漲る演出で描く。ゲーム感覚の謎めいた物語やシュールな美術・SFX等を駆使し、人間の闇部を抉った秀作。ある日突然、密室に閉じこめられた6人の男女。それは正方形の巨大な立方体だった。いったい何のために作られたものなのか、なぜ自分たちが閉じこめられたのかは誰も知らない。脱出方法は6つあるハッチのいずれかを選び、同じ立方体でつながっている隣に移動しながら出口を探す以外ないが、いくつかの部屋には殺人トラップが仕掛けられていた。そんな中、やがて彼らは安全な部屋を示す“暗号”に気づくが・・・。
1998年に上映された作品。
密室系サスペンスミステリー映画の元祖とも言われている作品。
ネタバレ感想です。
目が覚めると、立方体型の部屋。
部屋にはいくつかドアがあり、いくつかの部屋には罠が仕掛けられている。
数人の男女が集まり、物語は進む。
罠があるかないかをどうやって判断したらよいのか?
一体誰が自分たちをこんな目に合わせたのか?
出口は本当にあるのか?
など、登場人物たちは疑問を抱きながら物語は進んでいく。
この映画の真骨頂は、極限状態に置かれることによって現れる人間の本性。
追い込まれれば追い込まれるだけ、人間の底が見える。
こういうのは物語だけの世界と思っていたんだけど、今回のコロナ禍でパニック状態の人間の恐ろしさの一旦を感じた。(ちょっと大げさかな)
生にしがみついて、他人をないがしろにする人間。
生物としては当たり前の本能だが、人間として生まれたのであればそれを超える理性と知識を持って、最低限の倫理は守れるようになりたいと思った。
あと、もう一点よかったが、悪の親玉が結局わからないままだったこと。
物語では、悪の親玉なんていないという話になっている。
キューブ(登場人物が閉じ込められている建物)は政府が公共事業で作った建物。
しかし、当初の作った目的や許可した人物の存在は一切不明。
そして、一切不明のまま、完成まで至った建物だという。
システム化(歯車化)された組織や現代社会に対する風刺を感じた。
人が仕事をするのはお金と保身のためであって、それが何かは知らなくても建物は完成してしまうのだ。
与えられた仕事を何も考えずにこなす。正直、現代社会を生き抜くには必要なスキルだと思うが、行き過ぎには要注意。
悪の親玉ってとても分かりやすい概念だけど、そんな分かりやすい悪なんていないんだよって、メッセージもよかった。
この映画を見て思ったけど、リアル脱出ゲームとかで追い詰められたときに、人間観察すると面白いかもしれない。
とても趣味の悪いことを思いついた。